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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)386号 判決 1976年2月19日

控訴人

鏑木生コンクリート株式会社

右代表者

鏑木彦弾

右訴訟代理人

大谷正義

被控訴人

長久保嘉兵衛

右訴訟代理人

松本嘉市

外一名

主文

一、原判決を取り消す。

二、控訴人と被控訴人との間において控訴人が別紙目録記載の賃借権を有することを確認する。

三、訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一本件土地に関し、被控訴人と訴外鏑木との間に賃貸借契約が成立し、その後賃借人が訴外鏑木建材を経て控訴会社に変更され、昭和四四年四月二一日大森簡易裁判所において当事者間に調停が成立するまでの間における経過につき当事者間に争いない事実、当裁判所が証拠によつて認定した事実及びこれらに基づく当裁判所の判断は、次の通り付加及び訂正するほか、原判決理由一の(一)ないし(三)(原判決九枚目―記録二三丁―表二行目から一一枚目―記録二五丁―裏八枚目まで)の記載と同じであるからこれを引用する。

(一)、(二)<省略>

二ところで、控訴人が昭和四五年頃被控訴人の求めに応じ、遡つて、過去四年分につき税務署の評価による本件土地賃料相当額と既払賃料との差額に相当する金一、〇八〇万一、三二〇円を支払つたことについては、当事者間に争いないが、その趣旨に争いがあるのでこの点につき検討する。

<証拠>を総合すれば、被控訴人は、昭和四四年暮頃から翌年にかけて所得税関係につき所轄税務署の調査を受けたが、その際税務署員から本件土地の賃料は安過ぎるから税務署としては、同署の評価に基づく相当額の権利金ないし相当賃料額の収入が被控訴人側にあつたものと看做すか、又は逆に控訴人側に対し右権利金相当額の贈与がなされたものと看做すかせざるをえず、いずれにしてもこの分の課税は免れえない旨告げられたので、控訴会社と協議の結果、右税務署の評価に基づく昭和四一年一月分から同四四年一二月分までの本件土地の賃料とその間における既払賃料との差額として前記金一、〇八〇万一、三二〇円を控訴会社から被控訴人に支払うべき旨の合意がなされ、昭和四五年七月一二日その趣旨に副つて右金員が支払われたこと及びその頃本件土地の賃料を昭和四五年一月分から右税務署の評価に基づき一ケ月金二八万六、二〇〇円と定め、毎月末日限り翌月分を支払うことにする旨の合意がなされたことを認定することができ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

右認定事実に本件土地の使用目的は建物所有であること(この事実は被控訴人の自認しているところである。)、本件土地上の建物及び工作物は、生コン製造のバツチャープラント及びその附帯設備で、建物部分は重量鉄骨又は軽量鉄骨造りであつて借地法にいう堅固な建物に該当するか否かは別として所謂木造建物とは比較にならない程堅固であり、容易に撤去できるような簡易な設備ではないこと、控訴会社としては、昭和四五年当時これ丈の設備を収去して他に移転すべき土地の手当も資金の余裕もあつたわけではなかつたこと及び被控訴人の先代豊も、被控訴人も、昭和四〇年頃から控訴会社の本件土地に対する設備投資が、抜きさ差しならないものになつてゆくのを知りながら、このこと自体については何らの異議の申出も警告もしていないこと(以上は<証拠>により認定することができ<る。>)を合せ考えると、被控訴人は、昭和四五年七月一二日控訴会社から前記賃料差額金を受取るに際し、本件土地貸賃借契約を昭和四一年一月一日に遡つて建物所有を目的とし、期間の定めのない賃貸借契約に変更することを承認するとともにその頃控訴会社代表者との合意に基づき、賃料額及び支払方法等を前認定の通りに取り極めたものであると解するのが相当である。

前掲被控訴人本人尋問の結果中には、前記賃料差額金の授受によつて本件土地賃貸借契約を一時使用を目的とするものから借地法の適用あるものに変更する意図は毛頭なかつた旨の供述部分があるが、これは、仮に、真実を述べているとしても同人が内心に蔵した主観的意図の表白であつて、同人の行為及びその随伴的事情が前認定の通りである以上、前記解釈を左右しうるものではない。

三以上によれば、控訴人は本件土地につき別紙目録記載の賃借権(但し、期間は借地法二条一項により昭和四一年一月一日から三〇年間)を有するということができるから本件土地の所有者である被控訴人との間において控訴人が右賃借権(但し、期限については前記期間の範囲内である昭和六九年一月三一日まで)の確認を求める控訴人の本訴請求は正当として認容すべきであり、これと趣を異にする原判決は取消を免れない。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法九六条及び八九条を適用して主文の通り判決する。

(吉岡進 兼子徹夫 太田豊)

目録《略》

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